映画が大好きで、将来は映画業界へ就職したいと考えている学生は多いのではないでしょうか。もし映画業界に就職を希望しているなら、まずは映画業界の現状や動向、仕事内容などを知っておきましょう。今回は映画業界に関して詳しくご紹介しますので、ぜひ就活や企業研究、業界研究の参考にしてください。
映画業界の動向とは?
動画配信サイトの拡がりやヒット作になかなか恵まれないなどの影響で、一時は低迷していた国内の映画業界。しかし最近は、アニメやドラマなどと連動した作品作りやライブビューイングなどの企画もの、小資本ながらも良作の登場と、活気が戻りつつあります。過去には洋画人気が強かった映画ですが、2008年ごろから邦画のシェアが洋画を上回るようになってきました。近年では、邦画と洋画のシェアは、約7対3の割合となっております。
日本映画製作者連盟が2024年1月に発表した「全国映画概況」によると、洋画を含む映画全体の2023年度興行収入は2,214億円、前年とほぼ同じで堅調に推移しています。また邦画では、2023年度の興行収入上位10作のうち8作がアニメもしくは漫画を実写化した作品で、アニメや漫画が映画業界の業績をけん引する形となっています。
今後の課題
2019年に過去最高の興行収入を記録した国内の映画市場。その後に起きたコロナ禍の影響により、大きく売り上げを落とした時期もありましたが、2023年は、行動制限前とほぼ同程度ぐらいには回復してきました。しかし、他の業界と同じく、将来的には人口減少や高齢化による市場規模縮小の影響を受けるでしょう。またブロードバンド環境の整備や家庭用テレビの大型化・高画質化が進むなど、メディア環境の変化により、自宅でも高画質の映画を楽しむことができるようになりました。映画業界全体で、このような環境変化への対応力をつけることが急務といえます。
一方映画の製作現場では、映画会社やテレビ局を中心とする製作委員会の下に多くの下請け会社が存在しているのが現状です。これは中小の制作会社・クリエーター自らが資金調達をして映画製作をする機会が少ないためで、人材流出や制作拠点の海外移転などを防ぐためにも、資金調達の多様化と優秀な人材の確保・育成が今後の課題の1つになります。
成長戦略
映画館では、シネマコンプレックスやミニシアターの展開、4DXと呼ばれる次世代シアター(3D映像に加えてシートの可動や風・香りなど映画の中にいるかのような臨場感を味わえるシステムが搭載されたシアター)の導入など、魅力的な付加価値を持つ映画館が増えてきており、興行収入を支える一因となっています。また、成長が見込まれる海外市場への進出、多様化する映像メディアで映画コンテンツを2次利用するなどの取り組みも始まっています。
映画業界は、流通メディアや消費者の変化を把握し、配信ビジネスの更なる活用、コンテンツの特性による個々のメディア戦略など、海外進出も視野に入れながら業界全体としての収益維持に向けて動いています。
映画業界の主な企業・メーカー
東宝株式会社
1932年に設立された東宝は、映画の企画・製作、配給や興行にいたるまで、すべてを自社でおこなっています。また、グループ全体では映画製作の他にも演劇や不動産事業を扱い、2022年度の売上高は2,442億円、従業員数は約357名となっています。
2022年4月に中期経営戦略「TOHO VISION 2032」を策定しており、長期ビジョンに向けた3つの重要ポイントの一つとして、アニメ事業を「第4の柱」にすると発表しています。映画事業とアニメ事業で、収益の最大化を狙っていくとのことです。
東映株式会社
1949年設立の東映は2022年度の売上高が1,743億円で従業員数384名の企業です。映画だけでなくテレビドラマや教育映像、配信事業や不動産事業など、14もの事業領域を有しています。多様な映像制作を中心に多角的な事業展開をする総合コンテンツ企業を自負している、映画業界でもトップ企業の1つです。
松竹株式会社
1920年に設立された松竹は、映像・演劇・不動産を事業の軸としています。2022年度の売上高は782億円、従業員数597名の歴史ある企業です。また、松竹ならではの事業として歌舞伎に携わっており、歌舞伎座をはじめ新橋演舞場・大阪松竹座・京都四條南座を直営劇場として所有しています。日本の伝統芸能である歌舞伎を支えている松竹ですが、シネマ歌舞伎のような新しい事業の開拓など、時代の流れをくんだチャレンジを続けています。
映画業界で働く人の仕事内容(全体像)
製作
映画を企画し資金集めからスタッフの手配など、映画を製作するにあたって必要となるすべてのことが仕事になります。もちろん、一人であれもこれもこなすのではなく製作の中でも細かく職種は分かれています。
配給
日本で上映するために海外の映画を買い付けたり、国内の映画宣伝や公開日程などの調整をおこなったりします。また、買い付けた映画や国内の映画がヒット作になるように、宣伝方法を考えたりすることも大事な仕事になります。
興行
映画館の運営が主な仕事となります。映画館の運営と一言で言っても、上映する作品や上映スケジュールを決めたり、販売グッズの企画をして入場者数の増加を目指すなど、多岐に渡った仕事があります。
先輩の声
映画業界の採用数はとても少ないです。特に東宝、松竹や外資系のワーナー・ブラザーズなど有名大手企業への就職競争は熾烈を極めます。それぞれの企業で強みやカラーが違うので説明会やOB訪問などを通して各社の違いを明確にしておくのが良いでしょう。また、個人的に選考突破には映画業界でどうしても働きたい!という熱量を伝えることが大切だと感じました。自分の意欲をしっかりと伝えられるように準備していきましょう。
おわりに
近年はヒット作にも恵まれ、3D映像や次世代シアターの導入、コンテンツ事業の展開などで映画業界の売上高は好調といえます。今後も明るい兆しが予測されている映画業界ですので、就職を希望している就活生は映画業界の動向を見ながら企業研究もおこなっていきましょう。