デジタル化時代の到来によって紙媒体が減少し、苦境に立たされているイメージが強い印刷業界。市場が縮小するなか、多くの企業が売上高を維持しようと努力を重ねています。
今回は、印刷業界の動向や課題、主な企業や仕事内容などを詳しく解説します。印刷業界に就職を希望している就活生は、業界研究の参考にしてください。
印刷業界の動向とは?
印刷の種類を利用目的で分類すると、書箱や雑誌などの出版印刷、ポスターやカタログなどの商業印刷、帳票やノートなどの事業用印刷などがあります。こうした印刷の需要は、紙媒体と切り離して考えることはできません。インターネットの普及や電子書籍の登場、ペーパレス化といった時代の流れによる紙媒体の減少が、印刷需要にも大きく影響しています。そのため、印刷業界の市場縮小が進み、企業の売上高は減少傾向が続く状況です。
矢野経済研究所によると、市場規模は2013年の約3兆6千億円から、2017年には約3兆5千億円に縮小しました。商業印刷分野は比較的安定しているものの、全体的には今後もゆるやかなマイナス成長が予測されています。こうした状況下で、各企業は従来の印刷業務に加え、新たな試みを模索中です。独自の印刷技術やノウハウを活かして、壁紙・ICカード・パッケージなどの生活・産業製品、電子精密部品などの製造を行ったり、ネットプリント事業に参入するなど、事業の幅を拡げて売上高を伸ばす企業が登場するようになってきました。
今後の課題
デジタル化にどう対応するのか、そして紙媒体への印刷事業以外にも事業を展開して行けるのかが、今後の大きな課題となるでしょう。紙以外の素材への印刷、新たな付加価値を持つ印刷製品の開発など、印刷技術やノウハウをどの分野でどのように活用して行くのか、柔軟な発想が求められています。
成長戦略
デジタル化に加え、既存の枠にとらわれない「印刷」技術やサービスの提供、新たなビジネスモデルの確立などが、成長の種となるでしょう。AIやIoT、ビッグデータの活用などにも、印刷業界は取り組み始めています。また、文化交流や地方創生、健康づくりなど、クロスメディアによるコミュニケーションの最適化や地域活性化をテーマとする新ビジネスを展開したり、M&Aや異分野に参入することで総合印刷業を目指す戦略も見られます。
印刷業界の主な企業
TOPPANホールディングス株式会社(旧凸版印刷株式会社)
東京都に本社を構え、100年以上の歴史を誇る大手印刷企業です。印刷テクノロジーをベースに、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業の3分野に渡って幅広く事業を展開しており、2017年度の連結売上高は約1兆4,500億円。今や国内だけでなく、アジアやヨーロッパ、アメリカなどにも拠点を持つ、グローバル企業となっています。
大日本印刷株式会社
1876年創業の、印刷業界を牽引する大手印刷企業の1つです。2017年度の連結売上高は約1兆4,100億円。事業内容は、従来の印刷事業をベースとした電子書籍などの情報コミュニケーション部門、パッケージなどの生活・産業部門、液晶フィルムなどのエレクトロニクス部門、北海道コカ・コーラボトリング株式会社の清涼飲料事業など、多岐に渡っています。
TOPPANエッジ株式会社(旧トッパン・フォームズ株式会社)
1965年、当時世界最大のビジネスフォーム製造会社だったカナダのムーア・コーポレーションと、凸版印刷との合弁会社として誕生した企業です。アジアを中心に国内外に事業所を持っており、2017年度の単体売上高は約1,900億円。データ&ドキュメント・ITイノベーション・ビジネスプロダクト・グローバルの4事業を柱とし、新サービスの創出・早期事業化を目指すフロンティア事業にも取り組んでいます。
印刷業界で働く人の仕事内容
研究開発
研究開発の主な仕事内容は、基盤技術の研究・素材研究・商品研究など、事業に必要な研究と技術の開発をすることです。最近では、有機ディスプレイや画像処理ソフトといった、印刷以外のさまざまな技術の研究・開発も行っています。
商品開発
商品開発の主な仕事内容は、新商品の開発・既存商品の改善や改良・システムの開発などです。
生産技術
生産技術の主な仕事内容は、商品を製造するにあたって、コスト計算・品質保証・製造工程の設計・管理・改善など、生産にかかわる業務全般です。
その他
印刷企業には他にも、マーケティングやIT部門などの企画系、デナイナー、さらに営業・事務などの職種もあり、仕事内容は多岐に渡ります。
先輩の声
紙媒体の需要の減少により、印刷業界は大きな転換期を迎えています。そのため、ニーズの変化に対応できる柔軟さや新しいアイデアを形にする発想力、行動力がある人に向いている業界です。また、紙だけでなく、半導体やディスプレイを作っている企業もあり、選考にあたっては各企業の戦略の違いはしっかりと理解しておく必要があります。
おわりに
インターネットの普及やデジタル化、エコ意識も強くなってきている時代に突入し、紙媒体への印刷は減少しました。しかし、今まで培った印刷技術やノウハウを活かすことで事業拡大に成功し、売上高を堅調に維持・伸長させる企業も存在しています。今後も新たな展開が期待できる業界ですので、印刷業界への就職を希望している就活生はその動向に目を向けて、業界知識を深めておきましょう。