男女を問わず就職先として人気のあるデザイン業界ですが、職種が多岐に渡っていることをご存知でしょうか?デザイン業界に就職したい場合は、まず自分がどんな職種に就きたいのかを明確にすることが大切です。
そこで今回は、デザイン業界の現状や仕事内容について詳しく解説します。デザイン業界に就職を希望している就活生は、職種選択や業界研究の参考にしてください。
デザイン業界の動向とは?
経済産業省がおこなった「平成29年特定サービス産業実態調査」によると、国内には約7,600社のデザイン会社があり、業界全体の年間売上高は約3,329億円となっています。これにフリーランスのデザイナーを含めると、市場としての規模はさらに大きなものとなるでしょう。
ファッションや貴金属、インテリア、工業製品から出版物、Webサイトのデザインなど、デザイン市場は非常に幅広く、多岐に渡ります。そのためデザイン業界は、取引先が属する業界の好・不調の波を受けやすい業界ともいえます。特に近年は、紙媒体の減少などで出版市場が縮小傾向にあり、デザイン業界もその影響を受けている状況です。
一方で、好調なのがWeb媒体のデザインです。特に企業ホームページや新商品の広告など、Web上の多くのサイトを手掛けるWebデザインは、今や企業活動には欠かせないものとなっており、デザイン会社の業績を牽引しています。
今後の課題
近年は、素人でも簡単にデザイン制作ができるソフトウェアが販売されているため、企業内デザイナーとフリーランス、セミプロ(デザイン力の高い素人)とが競合する時代になったともいえます。まだまだ専門技術や経験が必要となることの多いデザイン職ですが、企業にとっては、優秀な人材の確保と最新テクノロジーの活用、国内外での事業展開の策定などが、今後の大きな課題となるでしょう。
成長戦略
デザイン性だけでなく競争力も高めることが、今後の重要な成長戦略といえます。そのためには、グローバルな視点や最新テクノロジーに関する知識、斬新なアイデアや高いデザイン力など、さまざまな分野における優秀な人材を確保・育成することが重要となります。そして、自社に不足するリソースを持つ企業や個人との業務提携やM&Aなど、経営における柔軟な発想と選択も成長には欠かせない要素になるでしょう。
デザイン業界の主な企業
デザイン業界は取引分野が多岐に渡るため、デザインを提供する企業も幅広い業界に存在します。ここでは主な企業3社を紹介しておきます。
株式会社ibma(アイビーエムエイ)
Web・グラフィック・プロダクト・イベント・ムービーの5つのデザイン事業を展開している、デザイン専門企業です。2017年度の売上高は約7億円、パンフレットから学会資料まで、多様な媒体のデザインを手掛けた実績を持ちます。Webやグラフィック事業ではデザインだけでなく、企画や取材・撮影などの制作全般も手掛けています。
株式会社乃村工藝社
ホテルの客室や飲食店など、あらゆる建築物の空間デザインや制作・企画などをおこなっている企業です。2018年度の売上高は120億円、建築物の設計からデザイン・施工までを一貫して請け負ったり、イベントの企画やデザインを手掛けたりしています。
株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ
凸版印刷株式会社を核とする、トッパングループの企業です。2018年度のグループ全体の売上高は約1,453億円でした。パッケージデザイン、紙媒体・映像・電子出版物などのデザインや企画を主な事業としています。製品の企画デザインをはじめ、校正・校閲・印刷までを一貫しておこなえる企業です。
デザイン業界で働く人の仕事内容
デザイン業界にはさまざまな職種があります。こでは、デザイン企業にとって重要な3つの職種について解説します。
デザイナー
取引先の事業形態やニーズに合わせて、非常に多くのデザイン職が存在します。たとえば、グラフィック・Web・ファッション・ゲーム・インテリア・プロダクト・CG・イラストレーター・DTPデザイナーなどです。
依頼内容にマッチしたデザインを作ることはどのデザイナーにも共通していますが、制作物が目指す役割は職種によって異なります。
企画・営業
企画部門は、社内のあらゆるリソースを使って各種調査・分析をおこない、クライアントの要望を満たす案を企画することが主な業務です。営業部門は、新規顧客開拓と受注が主な業務となります。
受注後は制作や展示会・プロモーションなどの企画立案や、クライアントと他の職種の調整役、納期・予算・進捗を管理する役割も担います。
ディレクター
クライアントの意向と制作メンバーの意見をすり合わせながらプロジェクトを進行させる、いわば現場監督のような役割です。プレゼンや各職種への業務内容の指示・検討、工程やクオリティ管理など、企画策定から納品に至るまでのプロジェクト全体をディレクションします。
柔軟な発想と技術・素材への幅広い知識だけでなく、コミュニケーション能力やリサーチ力、管理能力も必要とされます。1つのプロジェクトを生み出して世の中に届ける、非常にやりがいのある職種です。
他にも、記事の執筆や取材をおこなうライター、撮影を手掛けるカメラマン、映像スタッフなどの専門職があります。また一般企業と同様に、人事や経理といった企業運営に関わる職種もあります。
先輩の声
クリエイティブな仕事が多いと思われるデザイン業界ですが、実際は地味で泥臭い仕事をすることが多いです。基本的にデザインだけ作成して終わりということはなく、ほとんどの場合が実際の商品への印刷などまで行いますので、デザインや印刷段階の不備などがあると大きな損失になりかねないというプレッシャーもありますがその分やりがいも大きい仕事です。就活の際は理想を描きすぎず、自分が将来どのような仕事を実際にするのかをしっかりと考えて進めるといいと思います。
おわりに
紙媒体の減少で苦境に陥るかと思われたデザイン業界ですが、Webデザインへのニーズが好調で、業績を伸ばす企業も多く存在しています。デザイン業界への就職を希望する就活生は、自分の適性にマッチした分野の企業と職種を明確にし、業界研究と企業研究をしっかりとしておきましょう。