エネルギーや鉱物などの資源、食料・物資や製品、また旅客を船舶に載せ海上輸送する海運業界。グローバルな仕事やキャリアアップを目指す人に人気の就職先となっています。このページでは、海運業界の現状や将来性、また仕事内容や各社の特徴について考察したいと思います。
海運業界の動向とは?今後の課題・成長戦略
海運業界は世界物流の9割を担う重要なライフラインです。とくに、資源が少なく食糧自給率も低い、また製品の原料や生産も海外に頼ることが多い日本にとって必要不可欠なものです。2008年のリーマンショック以降、日本の海運業界は低迷し続けているものの、2018年には大手三社(日本郵船・商船三井・川崎汽船)のコンテナ船部門統合によってコスト削減が図られ堅調となる見通しです。また近年、陸上輸送においての労働力不足や道路渋滞、環境面などの問題改善のため、国内物流も鉄道や海運を利用して効率的な輸送を実現しようというモーダルシフトが推進されています。
最大の課題である非効率な港湾問題についても、国土交通省による改善が進んでいます。2010年には、貨物を国内からアジア主要港を経由せずに欧米へ直行させる狙いで、東京港・川崎港・横浜港で構成される「京浜港」と大阪港・神戸港で構成される「阪神港」が欧米向けのハブ港に指定され、2港の整備と機能強化、効率化が図られています。環境整備や、企業統合による効率化とコスト削減が進めば、今後も日本海運業界は、国内外を問わずさらなる成長が期待されます。
海運業界の仕事内容は?
国内外に向けての顧客獲得や契約の提案といった営業部門、法務・人事・財務・経理などの管理部門といった職種以外に、海運業界ならではの職種についてご紹介します。
いずれもグローバルな仕事であるため、英語などの語学力は必須となることが多いようです。
陸上事務職(船隊整備・企画)
各運航に最適な船を判断し手配したり、造船建造の判断や資金調達を行ったりします。
陸上事務職(運航管理)
航海計画を立てて各船舶に指示を行い、陸上から安全かつ効率的な運航を支援します。寄港地での入出港やトラブルへの対処も行います。
陸上技術職
新造船建造や運航船保守などの技術支援を行います。船舶の基本仕様を策定、新造船建造では設計や図面承認なども担当し、造船所では現場の監督業務も行います。運航船保守では運航船からの情報を分析し、保守や修繕・改造など今後の対策に活かすことによって安全な運航を支援します。また海外に駐在し現地で船舶の建造監督や保守業務に携わる場合もあります。
海上職
航海士や機関士など、いずれも国家資格が必要である船舶運航のためのプロフェッショナル職です。航海士は船を安全に運航し、貨物の積み降ろしを監督する業務を行います。機関士は船舶の運転状況を監視し、機器のメンテナンスを行う業務を担当します。陸上と海上とでローテーションすることによって、海上では陸上で培った業務を活かした運航に、陸上では海上で培った経験を活かした支援にあたることができます。
どんな企業がある?各社の特徴を理解しよう
日本郵船株式会社
日本海運業界最大手であり、世界有数の総合物流企業である「日本郵船」では、2018年には環境問題への取り組みを強化する資金手段として、海運業界では世界初のグリーンボンド(環境債)を発行、ブランド価値の向上を図ります。また、社員全員が生き生きと働けるよう、ワークライフバランスへの取り組みも積極的にされています。
株式会社商船三井
ハイレベルな人材育成プランや女性活躍の積極的な推進など、社員満足度が高く就職先としても人気の高い企業「商船三井」。プロフェッショナルを育てるための研修制度も充実しています。経験の浅い社員にも活躍の場が与えられ、ともに企業を成長させようという意識をおのずから身に着ける人が多いようです。LNG(液化天然ガス)等代替燃料への取り組みや参入を一元的に取り扱う部門も設置されており、2018年2月には、フランスの石油会社トタルとLNG燃料供給船の長期傭船契約を締結しています。
川崎汽船株式会社
2018年3月期連結決算で、最終損益103億円の黒字となった「川崎汽船」。海運以外の分野でも活躍して増収増益し、2018年5月には国内船舶向けに、環境性・経済性・安定性に優れたクリーンエネルギーLNG燃料の供給事業化を決定、中部電力、豊田通商ら4社と合弁会社を設立しました。比較的自由な社風で、性別年齢を問わず、ジョブローテーションでさまざまな業務が経験できます。学び続ける意欲がありチャレンジ精神が豊富な人材が求められます。
先輩の声
グローバル志向の学生に高い人気の海運業界は、資源のない島国である日本にとっては非常に重要な仕事になります。現在、環境問題の側面から、国内モーダルシフトにより海運業界の社会的意義も高まっています。
おわりに
海運業界は世界経済の動脈であり、資源や物資の少ない日本にとって重要なライフラインでもあります。今後もLNGなどクリーンエネルギーの普及や、ハブ港整備による欧米への輸出簡略化、国内物流のモーダルシフトなどによって成長が期待できるでしょう。