多くの就活生の憧れるマスコミやメディア業界には、ラジオ業界も含まれています。音を頼りに情報を発信するラジオ業界は根強い人気がありますが、業界内は大変革の時代とささやかれています。それを知らずに憧れの気持ちだけで応募してしまうと、夢と現実のギャップに戸惑うことがあるでしょう。
そこで、この記事ではラジオ業界についての前提知識の理解と、仕事内容や将来性、学歴の必要性について徹底解説して行きます。ぜひ最後までお付き合いいただけたらと思います。
ラジオ業界とは?
ラジオ業界は、音声放送を主なコンテンツとして提供するメディアの総称です。テレビやインターネットと並ぶ重要な情報伝達手段の一つであり、ニュース、音楽、トークショー、教育番組など多岐にわたるジャンルの番組を提供しています。
ラジオ局の種類
まずラジオ局には、キー局とローカル局という二つの種類がある点を押さえておきましょう。
キー局
キー局とは、ラジオ業界においてネットワーク系列の中心となる放送局のことを指します。これらの局は、自社で制作した番組をネットワーク系列を通じて全国の各エリア局に番組を供給し、全国に広がるリスナーに対して幅広いコンテンツを提供しています。
例えば、TBSラジオがJRN(ジャパン・ラジオ・ネットワーク)のキー局であり、全国34局の加盟局へ番組を提供しています。同様に、文化放送とニッポン放送がNRN(全国ラジオネットワーク)のキー局として機能し、40局の加盟局に番組を供給しています。このようなキー局は番組制作における中心的な役割を担い、スポンサー広告料の分配も管理しています
一般的に高い学歴や専門的なスキルを持った人材を求めており、就職難易度が非常に高いとされています。特に、東大・京大・早慶上智レベルの高学歴が求められることが多く、地方の大学生にとっては内定を得ることが非常に困難です
ローカル局
ローカル局は、キー局から番組供給を受け、特定の地域内で放送を行う局を指します。これらの局は、地域に根差した独自の番組制作や報道活動も行い、地域のリスナーに密着したサービスを提供しています
ローカル局は地方の大学生でもチャンスがあり、地元での就職を希望する学生にとっては魅力的な選択肢となります。ただし、キー局ほどではないものの、ローカル局への就職も競争は激しく、十分な準備と努力が必要です
ラジオ業界の動向
ラジオ業界は斜陽産業とされる傾向がありました。ただ、コロナ禍での在宅の時間が増えた影響により、何かをしながら楽しめるラジオに時間を割く若者が増えています。
文化放送の調査によると、過去5年間で、全体ではあまり聴取率に変化が見られないのに対して、Z世代では聴取割合が上昇傾向にあることが判明しています。特に、Z世代の女性を中心に聴取割合が高くなっています。
さらに、スマホでもラジオが聴けるアプリの「ラジコ」はZ世代から人気を集めています。実際に、ラジコの利用率はZ世代を中心に伸び続けているそうです。
ラジオ業界に向いている人の特徴
ラジオ業界は、クリエイティビティーなどが求められる仕事で向き不向きがはっきり分かれる仕事です。ここではラジオ業界で向いている人の特徴について解説していきます。
特徴①|コミュニケーション能力が高い
ラジオ業界では、言葉を通じて情報を伝えることが中心となるため、リスナーに響く言葉選びや表現力が求められます。また、チームで動くことが多いため社内の人たちと円滑なコミュニケーションを取る必要があります。
特徴②|柔軟性と適応力
ラジオ業界は、デジタル化やリスナーの嗜好の変化に応じてコンテンツを柔軟に変えていく必要があります。特に、視聴者のニーズは社会の流れの速さとともにどんどん変わっていきます。新しいトレンドに敏感で、常に学び続ける姿勢が重要と言えます。
かっちり物事をこなすのが好きという人より、次から次に色々な物に対して興味関心を抱き取り組んでいくような人の方が向いているといえます
特徴③|クリエイティビティ
斬新な番組企画やコンテンツの制作が求められるため、創造性と独自のアイデアを形にできる能力が必要です。リスナーを引きつけ、楽しませることができるクリエイティブな発想が求められます。常に、人の気持ちから逆算して企画等を進められるような人が向いていると言えるでしょう。
特徴④|耐ストレス性
緊急ニュースの対応や生放送中のトラブルなど、予期せぬ状況に冷静かつ迅速に対応する能力が求められます。ストレスの多い環境でも、冷静に判断し行動できることが必須です。また、番組制作等でのスケジュールの遅延等にもしっかり対応できる忍耐力が必要になります。
ラジオ業界の主な企業
ラジオ業界にはキー局から地方局まで、さまざまな企業が番組を制作・放送しています。ここではその中でも代表的な企業を紹介します。
株式会社ニッポン放送
株式会社ニッポン放送はキー局のひとつで、関東広域圏を放送対象地域とするAM・FM放送事業者です。「オールナイトニッポン」のキーステーションであることは全国的に知られています。早い段階からインターネットラジオにも積極的で、2000年から2018年までLFX mudigiやSuono Dolceなどのインターネットラジオ局を開設していました。
2023年3月期の売上高は138億1,800万円でした。前期比0.7%の着地となっています。
株式会社TBSラジオ
株式会社TBSラジオは、東京放送ホールディングスの連結子会社のキー局です。首都圏で一番聴かれているラジオ局といわれており、2001年8月から2016年4月調査分まで、首都圏におけるラジオ聴取率はトップを守っていました。
2023年3月期の売上高は84億9,000万円で、前期(87億4,300万)を下回っている状況です。
株式会社エフエム東京(TOKYO FM)
株式会社エフエム東京は、東京都を放送対象としてFMラジオ放送をおこなっています。その中でも、JFM38局で全国放送されている番組「SCHOOL OF LOCK!」は有名です。映画や出版、テレビ放送だけではなく、レストランの運営など飲食業にも進出しているのが特徴です。
2023年3月期の売上高は139 億円、営業利益は営業利益は 7億8000万円でした。
ラジオ業界で働く人の仕事内容
ラジオ業界の仕事といえば、DJやアナウンサーなどの出演者を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、番組を裏から支える制作者もたくさんいます。代表的な職種を紹介しましょう。
パーソナリティー、DJ
ラジオ番組の司会や進行役を務める出演者をラジオパーソナリティーと呼びます。DJと混合されがちですが、音楽がメインである番組の場合にDJと呼ばれることが多いようです。ラジオ番組のパーソナリティーは、そのラジオ局専属のアナウンサーが務めることもあれば、タレントなどが担当することもあります。正しい発声法や司会技術が必要であるため、就活では専門の訓練を受けた人が圧倒的に有利です。
編成
ラジオ業界における編成の仕事は、実際にオンエアする番組表やタイムテーブルを作成することです。リスナーのニーズに沿った番組を編成するために、調査をおこなう必要もあります。さまざまな人と深く関わるため、ラジオ局のまとめ役といえるでしょう。
製作・制作(プロデューサー・ディレクター)
放送番組の決定や出演者の交渉、予算の管理などをおこなう製作者がプロデューサー、現場で実際に番組を制作する役割を担うのがディレクターです。
特にディレクターは、ロケで取材をしたり、映像や音声を編集したり、演者と進行の打ち合わせをしたりと、多忙な現場に身を置くことになります。責任が重い仕事であるため、新卒ですぐにディレクターになることはほぼありません。最初はアシスタントディレクターとして、買い出しや必要なものの調達といった軽めの業務から始まり、ランクアップを目指します。
先輩の声
ラジオには声だけしか届かないからこそ聞いている人に想像させたり、余韻を残すことができると私は考えています。テレビがでて終わりの業界だと言われ続けてきましたが、今はインターネットの登場でラジオ業界も新しい時代が訪れておりとても面白い時期に入っているのではないでしょうか。
おわりに
インターネットが一般に浸透したことで、ラジオ業界も変革を求められる時代になっています。しかし、高齢者や地方在住者からのニーズは高く、今後の改革次第では市場が広がる可能性もありそうです。人気の高いラジオ業界への就職は狭き門ですが、魅力のある業界なのでチャレンジしてみてはいかがでしょうか。