風呂上りや暑い夏に飲むビールは最高に美味い!と言ってほぼ毎日飲むというビールファンも多いことでしょう。ビールの種類はたくさんありますが、国内のビール業界は大手メーカー4社がシェアのほとんどを占めています。今回は、こうしたビール業界の現状や動向・将来性などについて詳しく解説していきます。また、主なビールメーカーや仕事内容なども解説していきますので、就活生や企業研究をしている方は参考にしてください。
ビール業界の動向とは?
ビールには大きく分けて、ビール・発泡酒・第3のビール・ノンアルコールビールの4種類があります。発泡酒やノンアルコールビールが発売された当初は、ビールをはじめ売上高は好調な推移を辿っていました。しかし近年は、若者の酒離れや飲酒層の高齢化など、さまざまな要因により国内のビール売上高は減少傾向にあります。2017年におけるビール系飲料全体の出荷量は4億407万ケースで、前年と比べて2.6%の減少でした。
また、2018年4月に酒税法が改正されました。この改正で、米やとうもろこしなどに限定されていたビールの副原料として、果実やハーブ・わかめ・香辛料やコーヒーなど、さまざまなものが使えるようになり、今後の新商品の開発・販売に期待がふくらんでいます。
今後の課題
ビール系飲料全体の出荷量は、1990年代中頃のピーク時から約30%減少すると共に、13年連続で過去最低の出荷量を更新中です。今後、国内のビール市場は人口の減少と高齢化による需要の減少、酒類の販規制強化によるビール離れの加速、酒税の税率改正にともなう発泡酒・新ジャンルの価格上昇・RTDへのシフト加速など、さまざまな影響を受けるものと思われます。こうした業界環境の変化をいかに上手く切り抜けるかが、今後の課題といえるでしょう。
注)RTD:「Ready To Drink」の略で、ふたを開けてそのまま飲めるアルコール飲料を指します
成長戦略
酒税法改正の流れを受け、各ビールメーカーは従来のビールやクラフトビール・発泡酒だけでなく、フルーツビールやRTDなど、幅広い商品の開発・販売に乗り出しています。素材や健康機能などにこだわった高付加価値のプレミアムビールをはじめとする個性的な商品の開発で、消費者ニーズの多様化、低価格販売(志向)の広がりによる価格低下への対応を進め、市場の活性化を図るのが目的です。
また海外でM&Aなどを通じて販路を拡大し、売上を伸ばしている企業もあります。大手ビールメーカーは既に、国内市場縮小による環境変化に打ち勝つため、自身のブランド力・コスト競争力を一層強化し、新商品の開発、海外での販路拡大や新規事業の拡大などに動いています。
ビール業界の主な企業・メーカー
アサヒビール株式会社
1989年に設立後、グループ経営の本格化により2011年7月、アサヒグループホールディングス株式会社の純粋持株会社となりました。2017年度の売上高はグループ全体で約2兆1,000億円、ビールを含む酒類の売上高は約9,700億円となっています。また、同年度における市場のシェア率はビール系飲料全体で39.1%、第3のビールで30%と、業界第1位のシェア率を誇る大手ビールメーカーです。グループ全体としてはヨーロッパ・オセアニア・アジアでも海外事業を展開するグローバル企業でもあります。
アサヒスーパードライやアサヒ生ビールをはじめ糖質ゼロやカロリーオフビールなど、さまざまな種類のビールを生み出しているアサヒビール。「No.1ブランドの育成と構造改革を通じて、国内酒類のリーディングカンパニーを目指す!」のスローガンのもと、売上高を堅実に伸ばしています。
麒麟麦酒(キリンビール)株式会社
キリンビール株式会社は2007年、メルシャン株式会社・キリンビバレッジ株式会社と共にキリン株式会社の持ち株会社となりました。2017年度のグループ売上高は約1兆9,000億円、市場のシェア率はビール系飲料が31.8%、第3のビールが29.7%で共に業界第2位となっています。特に第3のビールでは、2005年以来続いていた首位を、わずか0.3%の差でアサヒビールに譲った形になっています。
一番搾り生ビールやラガービール、氷結®シリーズなど、ラインアップが豊富です。今後も「日本品質」にこだわり、グローバル企業としての成長を目指しています。
サントリービール株式会社
1899年創業のサントリーは、2009年にグローバル化と経営強化のためグループ経営を開始、ビールをはじめとする各種事業部門をグループ傘下の企業にしました。世界に312社のグループ会社を持ち、2017年度のグループ売上高は約2兆2,000億円(内33%が酒類)となっています。同年度の市場シェア率は、アサヒ、キリンに次いで第3位ですが、第3のビールが強く、上位2社と大差ないシェアを誇ります。
ザ・プレミアム・モルツや金麦、糖質・カロリーオフのオールフリーなどを生み出していますが、第3のビールである新ブランド「頂(いただき)」がヒットし、売上高とシェア率の上昇に貢献しました。「水と生きる」をモットーに、利益三分主義のもとGrowing for Goodなグローバル企業グループとしての成長を目指しています。
サッポロビール株式会社
1876年に創業し、2003年サッポログループの純粋持株会社制移行により、酒類事業を担う新会社として独立しました。2017年度の売上高は約5,500億円で、市場シェア率はビール系全体・第3のビール共に第4位となっています。
YEBISU(えびす)と黒ラベル生、麦とホップなどが主力商品です。グローバル展開を強化しつつ、原料の協働契約栽培など、独自の製造へのこだわりと取り組みで「感動創造企業No.1」を目指しています。
ビール業界で働く人の仕事内容
研究・開発
時代と共に変化する消費者の嗜好・ニーズに合った商品の開発や研究・試験、パッケージ開発などが主な仕事となります。ビール離れが進む中、消費者のニーズを確実につかみ、付加価値の高い商品を開発することが求められています。
製造
ビールには多くの醸造工程があります。この工程における生産ラインの管理や諸問題の解決、製品の品質管理などが主な仕事となります。製造に必要な設備の導入や効率化の計画立案、ときには環境への配慮といった社会貢献分野での対策を講じることもあります。
営業・販売促進
販路拡大のためにスーパーや量販店、飲食施設などに営業をしたり、既存の販売店での売り場管理や新規商談などをする仕事です。レイアウトのセンスや企画・提案力、コミュニケーション力も必要となるでしょう。
先輩の声
ビール業界を目指す人は、文系なら「ビールが好き」か「人を笑顔にできる」、理系なら「これまでの研究が活かせる」といった志望動機を考えることが多いので、そこにどれだけ独自の要素を入れられるかが重要だと思います。また、特に文系は社内外で沢山の人と関わるので、コミュニケーション能力や調整力を上手に伝えられると良いです。
おわりに
ビール離れなどのさまざまな要因により、国内市場では売上高が伸び悩んでいるビール業界。しかしM&Aの成功や海外ビール市場への参入などで、堅調な経営を維持しています。今後も大手ビールメーカーは独自のグローバル化と経営方針で進んでいくことでしょう。ビール業界に就職を希望している就活生は、今後の業界の動向を把握し、関連知識にも詳しくなっておきましょう。