
アニメ業界は、専門性の高いスキルや知識が求められる一方で、労働時間の長さや給与の低さなど、厳しい労働環境が課題として挙げられることも少なくありません。
さらに、近年では、海外からの競争激化や人材不足といった問題も顕在化しています。 このような状況下で、アニメ業界への就職を目指すにあたっては、業界の現状や課題、求められるスキルなどをしっかりと理解しておく必要があります。
そこで本記事では、アニメ業界への就職を検討している方に向けて、業界の動向や就職難易度、主要企業、仕事内容などを詳しく解説していきます。
- アニメ業界の現状と課題
- アニメ業界への就職難易度
- 学歴別の就職のしやすさ
- アニメ業界の主要5社
- アニメ業界で働く人の仕事内容
アニメ業界の動向とは?

アニメ業界は近年、目覚ましい成長を遂げています。2022年のアニメ配信市場は、動画配信サービス(VOD)の普及などにより、過去最高の1652億円に達しました。これは、過去10年間で10倍という驚異的な拡大です。
背景には、アニメの視聴手段が多様化し、より多くの人が手軽にアニメを楽しめるようになったことがあります。従来のテレビ放送に加え、スマートフォンやパソコンで、いつでもどこでもアニメを視聴できるようになったことが、市場拡大の大きな要因と言えるでしょう。
映画の相次ぐヒットが追い風 動画配信向けも好調|帝国データバンク
今後の課題
実際に、アニメ業界の市場拡大は目を見張るものがあります。ただ、これ以上に生産能力を引き上げるには、若年アニメ制作者の定着・育成が不可欠です。
しかし、若年アニメーターの賃金は他産業よりも大幅に低く、人材の流出が深刻化しています。今後、政府には原画マン、動画マン、仕上げなど、職種別に最低賃金を定め、特に若年者が多く就く動画マンなどの職種の賃金を中心に引き上げていく取り組みが求められます。
例えば、最低賃金の引き上げに加えて、アニメ制作会社への助成金制度を拡充する、若年アニメーターの育成プログラムを強化するなどの施策が考えられます。
成長戦略
現在のアニメ業界の市場規模を大きくしている要因に、海外市場があります。日本のアニメが海外で人気ということもあり、今後の成長戦略の1つとして海外を視野に入れたアニメ製作が業界の業績を伸ばす一因となるでしょう。
しかし、日本のアニメを海外配信するには言語の変換など難しい課題もあります。
アニメ業界への就職が難しい理由
アニメ業界への就職は、狭き門であることが知られています。その理由は、主に以下の3つです。
- 採用基準が厳しいから
- 業界特有のスキルが必要だから
- 知名度が高く人気の業界だから
1. 採用基準が厳しいから
アニメ業界では、高いレベルのスキルや経験が求められるため、採用基準が厳しくなっています。例えば、アニメーターや原画マンといった職種では、
- 優れた画力や表現力
- アニメーション制作ソフトの操作スキル
が必須です。また、制作進行やプロデューサーといった職種では、コミュニケーション能力やスケジュール管理能力、そしてアニメ制作に関する幅広い知識が求められます。
これらの能力を身につけるためには、専門学校や大学でアニメーション制作について学ぶ必要がある場合が多く、未経験者やスキル不足の応募者は、書類選考の段階で落とされてしまう可能性が高くなります。
2. 業界特有のスキルが必要だから
アニメ業界では、一般的なビジネススキルに加えて、業界特有のスキルや知識が必要とされます。例えば、
- アニメ制作の工程
- 専門用語への知見
- 著作権に関する知識
などです。これらのスキルは、実務経験を通して身につけることが一般的ですが、未経験者にとってはハードルが高いと言えます。
また、アニメ業界は変化の激しい業界であり、常に新しい技術や表現方法が生まれています。そのため、常に最新の情報や技術を習得し続ける必要があります。
3. 知名度が高く人気の業界だから
アニメは、日本を代表する文化の一つとして、世界中で高い人気を誇っています。そのため、アニメ業界で働くことを夢見る人は多く、競争率が非常に高くなっています。
特に、有名なアニメ制作会社や人気作品に関わる仕事は、多くの応募者が殺到するため、就職難易度はさらに高くなります。
アニメ業界の学歴別就職難易度
アニメ業界への就職を目指す上で、学歴はどの程度影響するのでしょうか?ここでは、文系、理系、高卒の3つのケースに分けて解説していきます。
- 文系と理系で大きな差異はない
- 高卒の場合:容易ではない
文系と理系で大きな差異はない
アニメ業界では、文系・理系出身者ともに活躍の場があります。
アニメ制作は多岐にわたる工程から成り立ち、求められる知識やスキルも様々です。そのため、文系だから、理系だからという理由で不利になることはありません。
高卒の場合:容易ではない
高卒でアニメ業界に就職することは、容易ではありません。しかし、不可能ではありません。アニメ業界では、学歴よりも実力や経験を重視する傾向があるため、高卒であっても、優れたスキルや才能があれば、就職できる可能性はあります。
例えば、アニメーターや原画マンといった職種では、画力や表現力が重視されます。そのため、独学で絵のスキルを磨いたり、専門学校に通ったりすることで、高卒であっても、アニメ制作会社に就職できる可能性があります。
また、制作進行やアシスタントなどの職種では、未経験者でも採用される場合があります。これらの職種では、コミュニケーション能力や事務処理能力などが求められます。
高卒でアニメ業界に就職するためには、自分の強みを活かせる職種を選ぶこと、そして、積極的にスキルアップを図ることが重要です。
アニメ業界の主要5社を紹介

アニメ業界の主要5社を紹介についてここでは解説していきます。
| 企業名 | 2023年期売上高 |
|---|---|
| ソニーグループ | 130,208億円※1 |
| バンダイナムコホールディングス | 9,900億円※2 |
| 東宝 | 2,442億円※3 |
| 東映アニメーション | 874億円※4 |
| KADOKAWA | 2,554億円※5 |
※2 業績・財務情報 | IR・投資家情報 | 株式会社バンダイナムコホールディングス
※3【東宝】[9602]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版
※4【東映アニメーション】[4816]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版
※5 【KADOKAWA】[9468]決算発表や業務・財務情報 | 日経電子版
1. ソニーグループ
ソニーグループは、音楽・映像メディア事業部門を通じてアニメ業界で大きな存在感を示しています。傘下のアニプレックスは「鬼滅の刃」や「Fate」シリーズなど、多くのヒット作を生み出しています。
2021年にはクランチロールを買収し、グローバルな配信プラットフォームを確立。音楽、ゲーム、映画など多岐にわたる事業との相乗効果を活かし、IPの多角的展開を行っています。
高品質なアニメーション制作と強力な配信網を武器に、国内外でのアニメ市場におけるリーダーシップを強化しています。
2. バンダイナムコホールディングス
バンダイナムコは、玩具、ゲーム、アニメ制作を統合的に展開する総合エンターテインメント企業です。「ガンダム」シリーズを中心に、IP(知的財産)を活用した多角的なビジネス展開が特徴です。
アニメ制作だけでなく、関連商品の販売、ゲーム化、イベント開催など、IPを最大限に活用するビジネスモデルを構築しています。
近年では、eスポーツやVR/AR技術を活用した新しいエンターテインメント体験の創出にも力を入れており、常に時代の先端を行く革新的な取り組みで業界をリードしています。
3. 東宝
東宝は、映画製作・配給に強みを持つ企業で、アニメーション分野でも重要な役割を果たしています。特に、スタジオジブリ作品の配給や、新海誠監督作品の製作・配給で大きな成功を収めています。
「君の名は。」「すずめの戸締まり」などのヒット作により、アニメーション映画市場での地位を確立。また、実写映画とアニメーションの融合や、海外市場への積極的な展開など、新たな試みにも挑戦しています。
劇場公開だけでなく、配信プラットフォームとの連携も強化し、多様な視聴形態に対応した戦略を展開しています。
4. 東映アニメーション
東映アニメーションは、1956年の設立以来、日本アニメーション界をリードし続けている老舗企業です。「ドラゴンボール」「ワンピース」「プリキュア」シリーズなど、長期にわたって人気を維持している作品を多数抱えています。
2024年3月期の連結売上高は88,654百万円に達し、安定した成長を遂げています。海外展開にも積極的で、アジア、欧米での知名度も高く、グローバルな事業展開を行っています。
また、デジタル技術の進化に合わせ、新たな視聴形態やコンテンツ展開にも柔軟に対応し、時代に即したアニメーション製作と配信を行っています。
5. KADOKAWA
KADOKAWAは、出版事業とのシナジーを活かしたアニメ展開が特徴です。ライトノベルや漫画の原作をアニメ化し、メディアミックス戦略を展開しています。
「盾の勇者の成り上がり」「オーバーロード」など、人気作品を多数生み出しています。出版、映像、ゲーム、Webサービスなど、多岐にわたる事業を展開し、それぞれの分野でのIPの相互活用を図っています。
近年では、電子書籍市場の拡大やWeb小説プラットフォームの運営など、デジタル領域での取り組みも強化。アニメ事業においても、配信プラットフォームとの連携を深め、グローバル展開を加速させています。
アニメ業界で働く人の仕事内容
アニメ業界での職種は多岐に渡ることから、さまざまな職種があります。ここでは、アニメ業界ならではの仕事内容を紹介します。
- 演出助手
- 美術デザイナー
- アニメーター
- 制作進行
演出助手
演出助手の主な仕事内容は、監督や演出家の助手として作画や動画などの制作がスムーズにおこなわれるように全体をサポートすることです。
将来的に、監督や演出家を目指している人にオススメの職種となっています。
美術デザイナー
美術デザイナーの主な仕事内容は、監督や演出家のイメージしている舞台作品の美術設定や背景画を作成することです。
Photoshopなどデザイン専門の機能を使用するので、ツールに詳しくなっておく必要があります。将来的には美術監督を目指すことのできる職種です。
アニメーター
アニメーターの主な仕事内容は、映像の元となる連続静止画を作成することです。技術が評価されると、作画監督になれる可能性がある職種です。
制作進行
制作進行の主な仕事内容は、各制作の工程を管理し進行していくことです。ひとつの制作に関わっているすべての人たちと関わりをもつ職種のため、コミュニケーション能力が必要とされる部署です。
おわりに
海外市場の盛り上がりもあって市場規模が2兆円を突破し過去最高の業績となっているアニメ業界ですが、国内市場は低迷している現状があります。今後も海外市場に向けて事業展開を拡大していき売上高を伸ばす動きが見られていますが、言語変換などの難しい課題も残されています。アニメ業界で働くには、アニメーターや演出助手など特殊な仕事内容の職種もありますので、就職を希望している就活生はしっかりと業界研究と企業研究をしておきましょう。



